AI開発用PCのスペック|コーディングAIはメモリ32GB、ローカルLLMはVRAMで決まる
「AI開発をするパソコンは何を買えばいいか」。答えは、その開発で何が手元で動くかで3つに分かれます。Claude CodeやCursorでクラウドのモデルに書かせる開発なら、GPUは要らず、要るのはメモリ32GBとCPUコア。ローカルLLMをアプリに組み込んで試す開発なら、動かすモデルの4bitのサイズがVRAMに収まるかがすべて。自分でモデルを学習させるなら、VRAM 24GB以上のGeForceが前提です。この3つのどれかを先に決めれば、スペック表で見る場所は2〜3か所に絞れます。
「AI開発」は3種類ある。要るものが違う
同じAI開発でも、手元のパソコンで動く部分がまったく違います。先に自分がどれかを見分けましょう。多くの人は1番目から始めて、半年で2番目に手を伸ばします。
| 開発の種類 | 手元で動くもの | 大事な部品 | GPU |
|---|---|---|---|
| 1. クラウドAIを使う開発 Claude Code・Codex CLI・Cursorでコードを書かせる。API経由でアプリにAIを組み込む | ビルド・テスト・Docker・開発サーバ・ブラウザ。モデルの推論は向こうのサーバ | メモリ32GB・CPU 8コア以上・NVMe 1TB | 不要 |
| 2. ローカルLLMを使う開発 OllamaやLM Studioで動かしたモデルをアプリから呼ぶ。社外に出せないデータでRAGを組む | モデルの推論そのもの。1トークンごとにモデル全体を読む | VRAM(GPU)かユニファイドメモリ(Mac)の容量と帯域幅 | 容量で決まる |
| 3. 学習・ファインチューニング 自社データでLoRAを当てる。小さなモデルを一から訓練する | 順伝播と逆伝播。推論の2〜4倍のメモリを同時に使う | VRAM 24GB以上・CUDA・電源と冷却 | GeForce前提 |
1番目に大きなGPUを積んでも、そのGPUは一度も使われません。逆に2番目をメモリ16GBのノートで始めると、モデルを1本入れた時点で他の作業ができなくなる。買い物の失敗はほぼこの勘違いから起きます。
クラウドAIで開発するなら: メモリ32GBとCPUコア
Claude CodeやCursorのエージェントモードは、コードを考える部分がクラウドにあるだけで、実際の作業はあなたのパソコンで動きます。書いたコードをビルドし、テストを回し、Dockerでデータベースを立ち上げ、ブラウザで動作を確かめる。こうした作業が全部手元で走ります。
メモリを数えてみます。Docker Desktopが起動時点で3〜4GB、VS CodeかCursorが言語サーバ込みで2〜3GB、Chromeのタブが20枚で3〜4GB、OSが3GB。ここまでで12〜14GB。エージェントがテストを走らせると、テスト用のNode.jsやPythonのプロセスがさらに2〜4GBを使います。合計16〜18GB。メモリ16GBのパソコンでは、テストが始まるとすぐにスワップに入ります。
32GBあれば、この山を越えても10GB以上の余裕が残ります。エージェントを2〜3本並列で走らせる使い方(別々のブランチで別々の修正をさせる)なら、山が2つ3つ重なるので64GBを見ておきましょう。
CPUはコア数が大事です。ビルドとテストは並列に走るので、8コアと16コアでは待ち時間が体感で半分近く変わる。クロックの高さより、コア数とメモリ容量です。SSDはnode_modulesやDockerイメージが数十GB単位で増えるので、NVMeの1TBが実用の下限になります。
「ゲーミングPCならAI開発も速いでしょう」。コーディングAIに関しては、そのGPUは一度も使われません。RTX 5070を積んだ25万円のゲーミングPCより、GPUなしでメモリ64GBの20万円のデスクトップのほうが、エージェントを並べる開発では速い。GPUの予算をメモリとCPUに回すのが正解です。
ローカルLLMで開発するなら: 4bitのサイズがVRAMに収まるか
ローカルのモデルをアプリに組み込む開発では、手元でモデルの推論が走ります。ここで大事なのはGPUの速さではなく、VRAMの容量です。モデルを標準的な軽さ(4bit)に量子化したファイルが、VRAMに収まるかどうか。収まれば動き、溢れると速度が数分の一に落ちる。
コード補完向けのQwen3-Coder 30B-A3Bで数えます。Q4_K_Mのファイルが17.3GB、会話8,000トークン分の作業メモリ(KVキャッシュ)と計算バッファを足して、必要量は19.1GB。VRAM 16GBのRTX 4070 Ti SUPERでは3.5GBほど溢れ、その分をメインメモリに逃がして動かすことになります。
それでも公開ベンチマークで補正した推定で毎秒40トークン。溢れても実用になるのは、このモデルがMoE型(1トークンごとに使う部分が3.3Bと小さい構造)だからです。
同じモデルをMac mini M4 Pro 48GBで動かすと、48GBのうちモデルに使える36GBに丸ごと収まり、毎秒55トークン(補正済み)。GPUなしのDDR5-5600・32GBのパソコンでも21GBの使える枠に収まって毎秒10トークン(推定)。読む速さの2倍なので、開発中の動作確認には足ります。
| 機種 | Qwen3-Coder 30B-A3B(Q4_K_M・19.1GB) | Qwen2.5-Coder 7B(Q4_K_M・5.4GB) | Devstral Small 24B(Q4_K_M・15.5GB) |
|---|---|---|---|
| RTX 4060 8GB | 11.6GB溢れる・毎秒15トークン(推定) | 収まる・毎秒40トークン(推定) | 8GB溢れる・毎秒4トークン(推定) |
| RTX 4070 Ti SUPER 16GB | 3.5GB溢れる・毎秒40トークン(補正済み) | 収まる・毎秒103トークン(補正済み) | 収まる・毎秒34トークン(補正済み) |
| RTX 5090 32GB | 収まる・毎秒276トークン(補正済み) | 収まる・毎秒225トークン(補正済み) | 収まる・毎秒74トークン(補正済み) |
| Mac mini M4 Pro 48GB | 収まる・毎秒55トークン(補正済み) | 収まる・毎秒45トークン(補正済み) | 収まる・毎秒15トークン(補正済み) |
| MacBook Air M4 24GB | 収まらない | 収まる・毎秒20トークン(補正済み) | 収まる・毎秒7トークン(補正済み) |
| DDR5-5600 32GB(GPUなし) | 収まる・毎秒10トークン(推定) | 収まる・毎秒8トークン(推定) | 収まる・毎秒3トークン(推定) |
表で目を引くのは、Devstral Small 24Bの列です。dense型(MoEではない、全パラメータを毎回読む通常の構造)なので、収まっていてもGPUなしでは毎秒3トークン。人が読む速さより遅い。ローカルLLMの開発で「GPUなしでも動く」と言えるのは、MoE型を選んだときだけです。
速度の目安は、毎秒10トークンが実用の下限で、ここで待たされる感覚はなくなります。20を超えると快適、30で目が追いつかなくなります。数字はどれも当サイトが測った値ではなく、公開ベンチマークから出した推定です。数割の誤差を見込んでおきましょう。
学習・ファインチューニングまでやるなら
推論と学習では、同じモデルでも要るメモリがまったく違います。学習では重みに加えて勾配とオプティマイザの状態を持ち、逆伝播のための中間データも積む。8Bクラスをそのまま学習させると、fp16でも80GB級のVRAMが要り、個人のパソコンでは無理です。
現実的なのはQLoRAです。本体を4bitに固定して、小さな追加パラメータだけを学習する方法で、8BクラスならVRAM 12〜16GBが目安、24GBあれば余裕が出ます(公開されているQLoRAの実装例と各種の報告から出した目安で、シーケンス長とバッチサイズで大きく変わります)。RTX 4090や5090の24〜32GBが、個人の学習用としては定番の理由がこれです。
学習はCUDA前提のライブラリがほとんどで、Macは同じ容量でもGeForceの数分の一の速度になります。学習を主にやるならGeForce一択。それも数時間GPUが100%で張り付くので、電源は1,000W級、ケースの冷却も先に見ておく必要があります。
最低・快適・余裕の3段階
| 段階 | 構成の目安 | できる開発 | 目安(2026年9月) |
|---|---|---|---|
| 最低 | メモリ32GB・8コア・NVMe 1TB・GPUなし | Claude Code・Cursorでの開発が1本なら問題なし。ローカルLLMは7〜8Bクラスと30BクラスのMoE型を動作確認の速さで | 12〜23万円 |
| 快適 | メモリ32〜64GB・VRAM 16GBかMac 48GB・NVMe 1〜2TB | エージェントを並べても動きが重くならない。ローカルLLMは20〜30Bクラスが実用速度。QLoRAの入門もVRAM 16GBで | 28〜38万円 |
| 余裕 | メモリ64〜96GB・VRAM 24〜32GB・NVMe 2TB以上 | 30Bクラスを4bitで最速。8BクラスのQLoRA、SDXLやFLUXの学習も。並列エージェントと同時に回せる | 55〜80万円 |
最低の段階が12〜23万円と幅があるのは、GPUなしデスクトップ(12〜18万円)と開発向けノート(15〜23万円)の差です。どちらもメモリ32GBが条件で、ここを16GBで妥協すると値段の差以上に失うものが大きい。ノートを選ぶなら、メモリが基板に直付けで後から増やせない機種が多いので、買う時点で32GBにしておきましょう。
MacかWindowsか
| 開発の種類 | 向いている側 | 理由 |
|---|---|---|
| クラウドAIでの開発(Claude Code・Cursor) | どちらでも | 要るのはメモリとコア数。WindowsはWSL2の上で動かす前提で、.wslconfigのメモリ上限を先に上げる |
| ローカルLLMの開発(30Bクラスまで) | GeForce 16〜24GB | 同じ容量ならMacの3〜4倍速い。CUDA前提のライブラリがそのまま動く |
| ローカルLLMの開発(70B以上・MoE型の120B) | Mac 64〜128GB・Ryzen AI Max+ 395 128GB | VRAM 48GBを超える民生GPUがない。ユニファイドメモリなら1台で収まる |
| 学習・ファインチューニング | GeForce 24GB以上 | 学習向けのライブラリはCUDAが前提。Macは数分の一の速度 |
| iOS向けアプリでAIを組み込む | Mac | Xcodeが要る。MLXでローカルモデルもそのまま動く |
Windowsで開発する人が最初につまずくのがWSL2のメモリ上限です。初期設定ではパソコンのメモリの半分までしかWSL2に割り当てられず、32GBの機種でも16GBで頭打ちになる。ホームフォルダの.wslconfigにmemory=24GBのように書いてから始めましょう。Dockerもこの上限の中で動きます。
買う前のチェックリスト
- 自分の開発が3種類のどれかを決めた。クラウドAIだけならGPUの予算をメモリに回す
- メモリは32GB以上。ノートは後から増やせない機種が多いので、注文時に32GBにした
- CPUは8コア以上。ビルドとテストが並列に走るので、クロックよりコア数
- SSDはNVMeの1TB以上。Dockerイメージとモデルファイルで、半年で500GBは埋まる
- ローカルLLMを動かすなら、動かしたいモデルの4bitの必要メモリをモデル別ページで見た(作業メモリ込みの数字)
- GPUの型番は末尾の容量まで見た。RTX 5060 Tiには8GBと16GBがあり、AI開発で意味があるのは16GBのほう
- 学習をやるなら、電源の容量(RTX 5090なら1,000W以上)とケースの冷却を確認した
- WindowsならWSL2のメモリ上限を上げる手順を知っている。Macならメモリに使える量(48GBなら36GB)で足りるか見た
よくある誤解
「NPU搭載のAIパソコンなら開発も速い」。速くなりません。NPUを使うのはWindows付属のリコールやライブ字幕で、Claude CodeもOllamaもPyTorchも使わない。Copilot+ PCを開発機にするなら、NPUの数字ではなくメモリ容量で選びましょう。
「GPUがあればClaude Codeが速くなる」。なりません。モデルの推論はAnthropicのサーバで、手元で走るのはビルドとテストです。GPUの予算は丸ごとメモリとCPUに回したほうが、体感の速さは上がります。
「メモリ64GBは個人の開発には過剰」。エージェントを1本しか走らせないなら32GBで足ります。ただ、ローカルLLMを1本立ち上げたままClaude Codeを回す使い方をすると、モデルが20GB、開発環境が18GBで、32GBは一杯です。両方やるなら64GBが普通の量になります。
「学習もMacでできる」。できることはできますが、GeForceの数分の一の速度です。MLXで小さなモデルのLoRAを試す程度なら実用ですが、学習を主にするならCUDAのある構成を選ぶのが確実です。
編集部メモ
当サイトのDBで204モデル×142機種の組み合わせを見ていて感じるのは、「AI開発用PC」を探している人の多くが、実際にはクラウドAIで開発する1番目の人だということです。その人にGPUは要らない。要るのはメモリ32GBと8コアで、これは12〜23万円で買えます。ここで30万円のゲーミングPCを買うと、GPUが遊んだままメモリ不足に悩む。一番よく見る失敗です。
正直に言えば、ローカルLLMの開発に手を伸ばすかどうかは、買う時点では分からない人が大半でしょう。だから当サイトは「デスクトップならGPUを後から足せる構成」か「Macならユニファイドメモリ48GB」を勧めています。どちらも、半年後にローカルLLMをやりたくなったときに買い直しにならない形です。
よくある質問
AI開発用のパソコンに最低限必要なスペックは?
Claude CodeやCursorでクラウドのモデルに書かせる開発なら、メモリ32GB・CPU 8コア以上・NVMe 1TBで、GPUは不要です。目安は12〜23万円。ローカルLLMを動かす開発なら、これにVRAM 16GBのGPUかユニファイドメモリ48GBのMacが加わります。
AI開発にGPUは必要?
クラウドAIを使う開発には要りません。ローカルLLMを手元で動かす開発と、学習・ファインチューニングには要ります。ローカルLLMは動かすモデルの4bitのサイズがVRAMに収まる容量、学習はVRAM 24GB以上のGeForceが目安です。
メモリは32GBと64GBのどちらにすべき?
エージェントを1本走らせる開発なら32GBで足ります。エージェントを2〜3本並べる、またはローカルLLMを立ち上げたままコーディングAIを使うなら64GBです。後者はモデルが20GB、開発環境が18GBで、32GBでは一杯になります。
AI開発はMacとWindowsのどちらがいい?
クラウドAIでの開発はどちらでも変わりません。30Bクラスまでのローカルモデルを速く動かすならGeForceのWindows、70B以上を1台で動かすならMacの64〜128GB、学習をやるならCUDAのあるGeForceです。iOSアプリを作るならXcodeの要るMac一択になります。
ローカルLLMをGPUなしで開発に使える?
MoE型のモデルなら使えます。Qwen3-Coder 30B-A3BはメモリDDR5-5600・32GBのパソコンで毎秒10トークン前後(推定)が出て、動作確認には足ります。dense型(全パラメータを毎回読む通常の構造)の24Bクラスは毎秒3トークンまで落ちるので、GPUなしでは実用になりません。
関連: Claude Codeの必要スペック / Cursor / Copilotの必要スペック / コーディングに使うPC / ローカルLLMに必要なPCスペック / メモリ16・32・64GBの差 / おすすめPC・Mac一覧