AI用途でメモリ16GB・32GB・64GBは何が変わるか — 増設で解決する人、買い替えが要る人
AIを使い始めて最初にぶつかる壁は、GPUではなくメインメモリであることが多い。ブラウザのタブ、エディタ、Docker、エージェント、ローカルモデル。全部がメモリを取り合います。この記事では、16GB・32GB・64GBで実際に何ができて何が詰まるかを、用途ごとに整理します。
まず、メモリが何に使われているか
AI用途で見えにくいのは、モデル以外の消費です。Chromeはタブ1枚で100〜300MB、20枚で数GB。VS CodeやCursorなどのElectron製エディタは1〜3GB。Docker Desktopは起動しただけで2〜4GB(WSL2の割り当て込み)。開発サーバと言語サーバでさらに1〜2GB。ここにClaude Codeのようなエージェントがビルドやテストを走らせると、一時的に数GB跳ねます。この「土台」だけで12〜16GBに達するので、16GBのPCではAIを使う前に埋まっています。
16GB: クラウドAIだけなら十分、エージェントには足りない
- できること: ChatGPT・Claude・Geminiをブラウザで快適に使う。Officeとの並行作業。Whisperのsmall/mediumモデル。8BクラスのローカルLLMをGPUなしで「試す」
- 詰まること: Docker+エディタ+ブラウザ+エージェント。ローカルLLMとブラウザの同居。画像生成のモデル読み込み時のピーク
- 対処: 増設できる機種(デスクトップ、一部のノート)なら16GB×2を追加して32GBに。オンボードで増設不可のノートは買い替え対象
32GB: エージェントとローカルAIの現実的な着地点
- できること: Claude Code / Cursor を1エージェント、Docker Desktopと開発サーバの同居。SDXL/FLUXの画像生成(VRAMは別途必要)。8〜14BのローカルLLMとブラウザの同居。n8n / Difyのセルフホスト。数百万行のデータ分析
- 詰まること: サブエージェントを3つ以上並列。複数のDockerスタック。30B級モデルのCPUオフロード(モデル自体が20GB)。動画生成の中間データ
- WSL2の注意: Windowsで開発する場合、WSL2は既定でメモリの50%まで取ります。32GBでも .wslconfig で上限を16〜20GBに調整しないと、Windows側が窒息します
64GB: 並列エージェントと大型モデルのオフロード
- できること: 並列エージェント、複数のワークツリーとコンテナ、大きなモノレポのインデックス。30B MoEをCPUオフロードなしで(Macなら48GB以上でGPU側に)。動画生成の中間データ。Claude CodeとCodexの併用
- 詰まること: 70B denseをCPUで動かす(載るが1秒に1〜2トークン)。それ以上はGPU/ユニファイドメモリの話
Macは話が別: ユニファイドメモリは「GPUメモリ」でもある
Apple SiliconのMacでは、メモリ容量がそのままローカルAIの上限を決めます。16GBは8Bモデルまで、24GBで14B、32GBで27B MoE、48GBで32B dense、64GBで70B、128GBで120B MoE。後から増設できないので、Windows PCより1段上を選ぶのが定石です。「Claude Codeだけなら24GBで十分、ローカルLLMもやるなら48GB以上」が目安。
増設で済む人・買い替えが要る人
| 今のPC | 増設可否 | 判断 |
|---|---|---|
| デスクトップ(DDR4/DDR5・空きスロットあり) | 可 | 16GB×2を追加。最も費用対効果が高いAI投資 |
| ノート(SO-DIMMスロットあり) | 可(機種による) | 底面を開けてスロットを確認。16GB×2で32GBに |
| 薄型ノート(オンボード・LPDDR) | 不可 | 買い替え。次はメモリ32GB以上を |
| Mac(全機種) | 不可 | 買い替え。ローカルAIをやるなら48GB以上 |
増設するときは、規格(DDR4/DDR5、デスクトップ用/ノート用SO-DIMM)と、2枚組で同容量を揃えること(デュアルチャネルで帯域が倍になり、GPUなしでローカルLLMを動かすときの速度に直結します)。
自分のPCが今どれだけ使っているかを見る
買う前に、今のPCで実際にどこまで使っているかを1週間観察すると、必要量が正確に分かります。Windowsならタスクマネージャーの「パフォーマンス」タブでメモリの「使用中」と「コミット済み」を見ます。コミット済みが物理メモリを常に超えているなら、スワップが起きています。Macなら「アクティビティモニタ」のメモリタブで「メモリプレッシャー」のグラフを見て、黄色や赤が続くなら不足です。Linuxは free -h や htop。この観察を、いつもの作業(エディタ・ブラウザ・Docker・エージェント)を全部開いた状態でやってください。ピークが物理メモリの80%を超えるなら、次の段階が必要です。
WSL2を使う人の設定(Windows)
WindowsでClaude CodeやDockerを使う場合、WSL2(Linux環境)が既定で物理メモリの50%(32GBなら16GB)まで確保します。しかもWSL2は一度確保したメモリをなかなか返さないため、Windows側のブラウザやOfficeが窒息します。ユーザーフォルダに .wslconfig というファイルを作り、次のように上限を決めておくと安定します。
[wsl2] memory=20GB processors=8 swap=8GB
32GB機なら memory=16〜20GB、64GB機なら 32〜40GB が目安です。Docker Desktopのメモリ上限もこの設定に従います。逆に言えば、WSL2で本格的に開発するなら「Windows側に16GB、WSL2側に16GB」で合計32GBが最低ラインになります。
速度の話: 容量だけでなく帯域幅
GPUなしでローカルLLMを動かすとき、生成速度はメモリ帯域幅で決まります。DDR4-3200デュアルチャネルで51GB/s、DDR5-5600で90GB/s。8Bの4bitモデル(約5GB)なら、理論上1秒に10〜18トークン、実効で6〜10トークン。読める速さですが、GPU(RTX 4060の272GB/s、RTX 4070の504GB/s)とは数倍の差があります。「メモリを増やせばGPUなしでも十分」は8B以下とMoEモデルに限った話で、それ以上はGPUかMacの領分です。
まとめ
- クラウドAIだけ → 16GBで十分。買い替え不要
- Claude Code・Cursor・自動化・画像生成 → 32GB。増設できるなら増設が最安の解決
- 並列エージェント・大型モデル・動画 → 64GB以上。Macなら48〜128GB
- Macは増設不可なので、迷ったら1段上