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クラウドAPIとローカルPC、どちらが安いか|回収期間を計算する

業務でAIを使う量が増えると、必ず「APIの従量課金を払い続けるか、PCを買ってローカルで動かすか」という判断を迫られます。答えは使用量で決まります。ここでは、その分岐点を自分の数字で計算できるようにしました。

先に結論の目安

クラウドのAPIは、使った分だけ払う代わりに上限がありません。ローカルPCは初期費用がかかる代わりに、あとは電気代だけです。分岐点はおおまかに次のあたりに来ます。

月間の使用量向いている形理由
数百万トークン以下クラウドAPI月数千円で収まる。PCへの投資は回収できない
数千万トークンどちらもあり用途と、データを外に出せるかで決める
億トークン規模、または常時稼働ローカル併設1〜2年で回収できることが多い
外に出せないデータがあるローカル一択コストではなく契約・規程の問題

ただしこれは目安です。実際の単価はモデルとサービスで10倍以上の幅があり、為替でも動きます。下の計算機に自社の数字を入れてください。

回収期間の計算機

入力した数値はブラウザ内で計算するだけで、どこにも送信しません。単価は契約中のサービスの料金表から転記してください。

いまの使い方

ローカルに置く場合

計算に入れ忘れやすいもの

コストで比べる前に確認すること

金額の前に、そもそもデータを外に出せるかを確認してください。契約や社内規程で外部送信が禁じられているなら、コスト比較の前にローカルが確定します。逆に出せるなら、まずクラウドAPIで小さく始めて、実際の使用量を1〜2か月測ってから判断するほうが確実です。見積もりの段階で使用量を当てられる人はほとんどいません。

ローカルに置く場合の構成の目安

用途によって必要な機材が変わります。当サイトのデータでは、業務でのローカルLLM運用はおおむね次の3段階です。

使い方構成の目安価格の目安
個人が試す・小さく始めるVRAM 12〜16GBのGPU搭載機、またはMac 32GB20〜38万円
部署で共有・常時稼働Mac mini M4 Pro 64GBやRyzen AI Max+ 395 128GB32〜48万円
全社・大型モデル・学習もRTX 5090搭載ワークステーションやMac Studio M5 Ultra75〜185万円

予算から選ぶなら予算別のページ、動かしたいモデルが決まっているならモデル別のページで必要メモリを先に確認してください。

実際の数字で計算してみる

目安の表よりも、自社に近い形の数字を一度たどるほうが早く腹に落ちます。単価は入力が100万トークンあたり450円、出力が100万トークンあたり2,250円(2026年9月時点の中位クラスの目安)で計算しました。

例1: 議事録の要約を毎日回す部署

90分の会議の文字起こしは、日本語でおおよそ4万字。日本語は1文字あたり0.7〜1トークンほどなので、入力は約3.5万トークン。要約の出力を3,000トークンとします。1日4本、月20営業日で80本。

入力は 3.5万 × 80 = 280万トークン、出力は 3,000 × 80 = 24万トークン。金額にすると 280万 ÷ 100万 × 450 = 1,260円、24万 ÷ 100万 × 2,250 = 540円。合わせて月1,800円です。年間で2万円強。ここで36万円のMac miniを買っても、回収まで約17年かかります。この使い方なら、クラウドのまま動かすのが正解です。

例2: 社内文書の検索・要約を常時動かす

社内規程やマニュアルを検索して答えるRAGを、全社の問い合わせ窓口として動かす場合。1件あたり、検索で引いた文書を含めて入力2万トークン、出力800トークン。1日300件、月9,000件とします。

入力は 2万 × 9,000 = 1億8,000万トークン。180 × 450 = 81,000円。出力は 800 × 9,000 = 720万トークンで、7.2 × 2,250 = 16,200円。月およそ97,000円。年間116万円です。

これをローカルに置くとどうなるか。Ryzen AI Max+ 395の128GB機を48万円、稼働時の平均消費電力を150Wとすると、電気代は 150W ÷ 1,000 × 24時間 × 30.4日 × 31円 = 月約3,400円。差額は月93,600円で、48万 ÷ 9.36万 = 約5.1か月で回収します。ここまで来ると、判断は「回収できるか」ではなく「ローカルのモデルで同じ品質が出るか」に移ります。

2つの例の差は、使用量にして約62倍です。同じ「業務でAIを使う」という言葉でも、コストの構造はまったく別物になります。だから目安の表ではなく、自社の件数で計算する必要があります。

トークン数の見積もり方

計算機に入れる数字のうち、いちばん外しやすいのが月間トークン数です。見積もりで当てようとせず、次の順で測るのが確実です。

よくある3つの誤解

「ローカルなら無料」。電気代と人手がかかります。150Wの機材を24時間動かせば年に4万円ほど、構築と保守に月2時間使えば人件費も乗ります。無料になるのは限界費用であって、総額ではありません。

「APIは高い」。少量なら圧倒的に安く済みます。例1のように月1,800円で回っている使い方に、数十万円の機材を投じる理由はありません。高いと感じるのは、たいてい使用量が想定を超えて伸びたときです。

「ローカルでも同じモデルが動く」。動きません。手元で現実的に動かせるのは27〜32Bクラス、大容量メモリの機材で70B〜120BのMoE型までです。クラウドの上位モデルとは別物と考えたほうが安全です。モデル別のページで、動かしたいモデルの必要メモリを先に確認しましょう。コスト比較が成り立つのは、同じ仕事ができる範囲に限られます。

稟議に載せるときに聞かれること

金額の妥当性より、運用の継続性を問われることが多くなります。先に用意しておくと通りが早い項目です。

聞かれること用意しておくもの
本当にその使用量になるのか1〜2か月のPoCで測った実績値。見積もりではなく実測
止まったらどうするのかクラウドAPIへの切り戻し手順。両方を使える形にしておく
誰が保守するのか月次の作業内容と想定時間。属人化しない手順書
何年使う前提か3〜4年。資産計上と減価償却の扱いは経理・顧問税理士に確認
セキュリティはどうなるのか社外に出せないデータをAIで扱うの構成図と運用ルール

編集部メモ: 回収期間を計算してもらうと、多くの場合「思ったより使っていない」という結果が出ます。感覚では毎日たくさん使っているつもりでも、トークン数に直すと月数千円ということが珍しくありません。そこで計画が止まるなら、それは正しく止まったということです。逆に、計算して数か月で回収できると出た会社は、たいてい外に出せないデータの問題も同時に抱えています。コストは決め手ではなく、判断を後押しする材料として使うのが実態に合っています。

そもそも比較の土俵に乗っているか

コストの数字を並べる前に、両者が同じ仕事をこなせるかを確かめておく必要があります。ここを飛ばした比較は、たいてい導入後にひっくり返ります。確かめ方は単純で、実際の業務データで同じ質問を投げるだけです。

  1. 過去に処理した案件を20件選ぶ: 典型的なものと、難しかったものを混ぜる
  2. 同じ入力を両方に投げる: クラウドの上位モデルと、ローカルで動かす候補のモデル
  3. 使う人に見せて選ばせる: どちらの出力か伏せたまま、業務で使えるかどうかだけを判定してもらう
  4. 差が出た案件を見る: 何割で差が出たか、どういう種類の案件で品質が落ちたか

ここで8割以上が「どちらでも使える」と判定されるなら、コスト比較に意味があります。半分を切るなら、金額の話をする段階ではありません。ローカルで動かす候補はモデル別のページから選べます。

途中で判断を変えるための測り方

一度決めた形を持ち続ける必要はありません。使用量は用途が増えるたびに変わるので、四半期ごとに見直す前提で数字を残しておくと、切り替えの判断がしやすくなります。残しておく数字は3つだけで足ります。

記録するもの取り方何が分かるか
月間トークン数APIの請求額 ÷ 単価、またはログの合計回収期間の再計算。使用量が伸びるペース
処理の内訳用途ごとに件数を数えるどの処理をローカルへ寄せると効果が大きいか
待ち時間の許容使う人に「何秒までなら待てるか」を聞くローカルで足りるかの線引き

3つ目を測っている会社は多くありません。ところが、ローカル化がうまくいくかどうかは、ここでほぼ決まります。1秒に20トークン出れば対話に使えますが、2トークンでは同じ人が二度と使いません。手持ちのPCで判定すると、候補の機材でどれくらいの速度が出るかを先に見積もれます。

ローカルに寄せやすい処理・寄せにくい処理

全部を移す必要はありません。使用量が多くて仕事の範囲が狭い処理から順に寄せると、投資の効果が大きくなります。

処理ローカル化理由
定型文書の分類・タグ付け向く件数が多く、求められる判断が狭い。小さいモデルで足りる
社内文書の検索と要約向く機密を含みやすく、件数も多い。範囲が決まっている
議事録の要約向く入力が長くトークン数が伸びる。品質の要求はほどほど
複雑な推論・企画の壁打ち向かないクラウドの上位モデルとの差が出やすい。件数も少ない
長いコードの生成向かない品質差が結果に直結する。使う人が待てない

上3行をローカルへ、下2行をクラウドに残す。この形に落ち着く会社が多く、コストの伸びを抑えつつ品質も落とさずに済みます。

よくある質問

クラウドAPIとローカル、両方を使う形はありですか

むしろそれが現実的な構成です。外に出せる仕事はクラウドの上位モデルに投げ、機密を含む処理だけローカルに回す。使用量の多い定型処理をローカルに寄せると、コストの伸びも抑えられます。切り替えできる形にしておくと、障害時の逃げ道にもなります。

何人で使うと元が取れますか

人数ではなく処理量で決まります。10人で軽く使うより、1人が自動処理を大量に回すほうがトークン数は多くなります。上の計算機に、人数ではなく月間の件数を入れて確かめるのが確実です。

電気代は実際どれくらいですか

アイドル中心の常時稼働なら、Mac miniクラスで年1,100〜1,900円、GPUを積んだワークステーションを終日動かすと年3〜6万円が目安です(31円/kWhで計算)。推論中だけ電力が上がる使い方なら、この範囲の下寄りに収まります。

買ったPCが陳腐化しませんか

ローカルLLM用途では、容量の大きい機材ほど陳腐化が遅くなります。速度は世代で伸びますが、動かせるモデルの上限を決めるのはメモリ容量で、こちらは買った時点から変わりません。3年後も、どのモデルまでメモリに収まるかの線引きは変わりません。

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