AI用途でMacかWindowsか|用途別の決め方と、それぞれが得意なこと
AI用途のPC選びで最初に分かれる道です。画像・動画生成をやるならWindows(GeForce)、ローカルLLMの大きなモデルを動かすならMac、コーディングAIやクラウドAIならどちらでもよく静音と持ち運びで決める。理由は好みではなく、メモリの構造にあります。
決定的な違いは「メモリの構造」
Windows PCでは、CPU用のメインメモリ(DDR5)とGPU用のVRAM(GDDR7)が別々に載っています。AIモデルをGPUで動かすには、VRAMに載せなければならず、その上限は単体GPUで32GB(RTX 5090)です。メインメモリが64GBあっても、GPUからは使えません(CPUオフロードという手段はありますが、速度が数分の一になります)。
Apple SiliconのMacは「ユニファイドメモリ」で、CPUとGPUが同じメモリを共有します。メモリ64GBのMacなら、そのうち約48GBをGPUがモデルに使えます。128GBなら約96GB。つまりMacはGeForceのVRAMには載らない大きさのモデルも動かせる。これが、ローカルLLMの大型モデルでMacが選ばれる理由です。
ただし速度はメモリ帯域幅で決まり、ここではGeForceが有利です。RTX 4090は1,008GB/s、RTX 5090は1,792GB/s。対してM4 Proは273GB/s、M5 Maxは614GB/s、M5 Ultraで1.2TB/s。Ultra以外は、同じモデルがどちらにも収まるならGeForceのほうが速い。Macは「動かせるモデルの大きさ」で勝ち、GeForceは「速さ」で勝ちます。
用途別の判定
| 用途 | Mac | Windows(GeForce) | 判定 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT・Claude・Geminiを使う | ◎ | ◎ | どちらでも。静音・バッテリーならMac |
| Claude Code・Codex(コーディングAI) | ◎ Unix環境がそのまま | ○ WSL2経由 | Macがやや素直。Windowsも問題なし |
| 自動化・エージェント常時運用 | ◎ Mac miniが静音省電力 | ○ 静音ミニPC+Linux | どちらも可。LinuxミニPCが最安 |
| Stable Diffusion・FLUX(画像生成) | △ 動くが2〜4倍遅い | ◎ CUDAが標準 | Windows |
| 動画生成AI | × 実用外 | ◎ VRAM 24GB以上 | Windows一択 |
| ローカルLLM 8〜14B | ◎ 16〜24GBで十分 | ◎ VRAM 8〜12GB | どちらでも |
| ローカルLLM 27〜32B | ◎ 48GBで動く | ○ 24〜32GBのGPUが必要(高価) | 容量ならMac、速度ならGeForce |
| ローカルLLM 70B〜120BのMoE型 | ◎ 64〜128GB | × 単体GPUでは不可 | Mac(またはRyzen AI Max機) |
| 文字起こし(Whisper) | ◎ MLX版が快適 | ◎ GPUで最速 | どちらでも |
| Copilot+ PC機能(リコール等) | × | ◎ NPU搭載機のみ | Windows |
Macを選ぶべき人
- ローカルLLMで27B以上を日常的に使いたい。特に70B以上や120BのMoE型は、個人が現実的に持てる手段がMacかRyzen AI Max機しかない
- Claude Codeなどのターミナル中心のエージェントを、環境構築で悩まずに使いたい
- 静音・省電力で常時稼働させたい(Mac miniのアイドル消費電力は数W)
- 持ち運んで開発とローカルLLMの両方をやりたい(MacBook Pro M4 Pro 48GB)
注意点は、メモリを後から増やせないこと。Macは購入時のメモリ容量のまま使い続けることになります。ローカルLLMを視野に入れるなら、24GBではなく48GB、迷ったら64GBを選んでください。差額は後悔より安い。
Windowsを選ぶべき人
- 画像生成・動画生成をやる。ツールがCUDA前提で、GeForceなら「動くか」を悩まなくてよい
- 同じモデルをより速く動かしたい(帯域幅の差)
- 後からGPUを載せ替えて拡張したい(デスクトップ)。VRAM 8GBから始めて16GB、32GBへ段階的に
- 自作でコストを詰めたい。同じ予算なら一段上のGPUに届く
- Copilot+ PCの機能や、Windows専用の業務ソフトが必要
注意点は、ノート用GPUのVRAMが少ないこと。RTX 5070 Laptopは8GB(デスクトップ版は12GB)。ノートで画像生成やローカルLLMをやるなら型番の後ろのVRAM容量を必ず確認してください。もう一つ、Claude Codeを使うならWSL2のメモリ割り当て(.wslconfig)を調整する必要があります。
第三の選択肢: Ryzen AI Max+ 395
AMDのRyzen AI Max+ 395は、Windows/Linux機でありながらMacと同じユニファイドメモリ構造を持ち、128GBのうち最大96GBをGPUに割り当てられます。gpt-oss-120bや70Bクラスがメモリに収まる唯一のx86機です。帯域は256GB/s(M4 Proより少し狭い)で、MoE型なら実用的な速さ、dense型(MoEではない通常の構造)の70Bは遅め。
ミニPCやHPのワークステーション型で入手できます。Windowsで大型のローカルLLMを動かしたいなら、これが第一候補です。
予算帯ごとの具体的な対応表
同じ予算で、MacとWindowsがそれぞれ何を買えるかを並べると、判断がしやすくなります。価格は2026年9月時点の目安です。
| 予算 | Mac | Windows(GeForce) | AI用途での違い |
|---|---|---|---|
| 15万円前後 | Mac mini M4 24GB | RTX 5060(8GB)デスクトップ・メモリ32GB | ローカルLLMはMacが上(14Bまで動く)、画像生成はWindowsだけが実用 |
| 25万円前後 | MacBook Air M4 24GB / Mac mini M4 Pro 24GB | RTX 5070(12GB)デスクトップ / RTX 5070 Laptop | SDXLが快適なのはWindows。持ち運び開発ならMacBook Air |
| 35万円前後 | Mac mini M4 Pro 48GB | RTX 5070 Ti(16GB)デスクトップ | 27〜32BのLLMが動くのはMac、FLUXやGemma 4 26B-A4BなどのMoE型を速く回すのはWindows |
| 45万円前後 | MacBook Pro M4 Pro 48GB / Mac mini M4 Pro 64GB | RTX 5080(16GB)デスクトップ・メモリ64GB | 70Bが動くのはMac 64GB。画像生成の速さはRTX 5080。動画生成・学習を本格的にやるならRTX 5090(55〜75万円) |
| 70万円前後 | Mac Studio M4 Max 128GB | RTX 5090デスクトップ・メモリ64GB | 120BのMoE型が動くのはMac。GeForceは32GBが上限 |
見えてくるのは、25〜35万円帯が最も判断の分かれる価格帯だということです。ここではMacが「動かせるモデルの大きさ」で、Windowsが「画像生成の対応と速度」で、それぞれ相手を上回ります。用途を先に決めてから予算を当てはめてください。
速度の実感: 同じモデルでどれくらい違うか
当サイトのデータベース(公開ベンチマークで補正した推定値)で、8Bクラスの4bitモデルを動かした場合の生成速度を比べると、RTX 4070(帯域504GB/s)で1秒に60トークン前後、M4 Pro(273GB/s)で30〜40トークン、M4無印(120GB/s)で15〜20トークン、GPUなしのDDR5機で8〜10トークンです。
人が読む速さは1秒に5トークン前後なので、どれも「読める」速度ではありますが、長い出力を待つ時間や、エージェントが何往復もする用途では差が積み上がります。Macを選ぶ場合、M4無印とM4 Pro/Maxの帯域差(120 / 273 / 546GB/s)は価格差以上に体感の差になります。ローカルLLMを主目的にするなら、Pro以上を選んでください。
両方を持つという選択
用途が分かれている人にとって、意外と現実的なのが2台体制です。画像生成はGeForce機、開発とローカルLLMはMac、という分け方をすると、互いの弱点を補えます。合計金額は1台に集約するより増えますが、片方を中古やエントリー機にすれば差は縮まります。
たとえば、Mac mini M4 24GB(14〜17万円)とRTX 5070搭載デスクトップ(20〜28万円)で合計34〜45万円。1台にまとめてMacBook Pro M4 Pro 48GB(42〜52万円)を買うのと近い金額で、画像生成という「Macが苦手な領域」がカバーされます。据え置きが2台になる置き場所の問題と、環境を2つ管理する手間が対価です。
逆に集約が向くのは、持ち運ぶ必要がある人と、片方の用途しかやらない人。当サイトのおすすめ表示が「別の形なら」として3台目に異なる形態を出すのは、この判断の材料を見せるためです。
中古市場での考え方
AI用途では、世代の新しさより容量のほうが大事です。この性質のおかげで、中古の選択肢が他の用途より広い。
| 候補 | AI用途での位置づけ | 注意点 |
|---|---|---|
| RTX 3090(24GB) | 帯域936GB/sで27〜32Bが動く。ローカルLLMでは今も一線級 | 消費電力350W、保証なし、電源とケースの余裕が必要 |
| RTX 4090(24GB) | 帯域1,008GB/sで現行最上位に近い | 中古でも高値。新品のRTX 5090との差額を確認 |
| M1 Max / M2 Max(64GB) | 帯域400GB/sで70Bが動く。静音・省電力 | バッテリーの劣化、メモリは増やせない |
| M2 Ultra(128GB以上) | 帯域800GB/sは今も最速級 | Mac Studioのみ。個体数が少ない |
VRAM 8GB以下の中古GPUは避けましょう。安く見えても、SDXLは省メモリ設定でようやく動く程度で、FLUXも27Bクラスも動かず、結局買い直しになります。中古で狙うなら容量から入りましょう。
買う前のチェックリスト
Macを買うなら
- メモリは用途の1段上か(Claude Codeだけなら24GB、ローカルLLM 27B以上なら48GB、70Bなら64GB以上)。後から増やせません
- 無印とPro/Maxの帯域差(120 / 273 / 546GB/s)を理解して選んだか。ローカルLLMが主目的なら、無印は速度で後悔しやすい
- 画像生成・動画生成をやらないと決めたか。やるならこの時点でWindowsに戻る
- SSDは1TB以上か(モデル1本で5〜70GB)。外付けSSDにモデルを置く手もある
Windowsを買うなら
- GPUの型番の末尾のVRAM容量を確認したか(8GB / 12GB / 16GB / 24GB / 32GB)。ノート用は同じ型番でも少ない
- 電源容量は足りるか(RTX 5070 Ti以上は750W、RTX 5090は1000W推奨)。BTOは構成に含まれるが、GPU単体交換では要確認
- メモリは32GB以上か。WSL2を使うなら .wslconfigで上限を決める前提か
- ケースにGPUが物理的に入るか(RTX 5090は全長30cm超のモデルが多い)
編集部メモ: 当サイトのDBで247,790通りの組み合わせを計算して見えたのは、25〜35万円帯で「Mac mini M4 Pro 48GB」と「RTX 5070 Ti搭載デスクトップ」が真正面からぶつかることです。動かせるモデルの大きさはMacが上、画像生成と速度はWindowsが上で、どちらも相手の土俵では勝てません。この価格帯で迷っている人は、機種を比べる前に「画像生成をやるか」だけ決めてください。それで9割は決まります。
買ったあとに出てくる差
カタログの数字に出ない違いも、使い続けると差になります。Macは静音でバッテリーが持ち、スリープからの復帰が速い。長時間の作業では、この積み重ねがものを言います。一方Windowsは、GPUを交換できる、メモリを増やせる、部品を選べるという拡張性が高い。壊れたときも部品単位で直せます。数年使う前提なら、性能表の比較と同じくらい、この「あとから変えられるか」を見ておく価値があります。
迷ったときの決め方
- 画像・動画生成をやる → Windows(GeForce VRAM 16GB以上)
- やらない。ローカルLLMで27B以上を動かしたい → Mac 48GB以上
- どちらもやらない → 今のPCか、好きなほう。メモリ32GBだけ確保
当サイトのトップページで用途を選ぶと、この判断を機種名まで絞り込んで3台出します。Macで要件を満たせない用途(動画生成など)では、その理由を明示して別の形を提案します。
同じ仕事を、いくらで買えるか
用途ごとに、要件を満たす最小構成の目安を並べます。2026年9月時点の価格帯で、リンク先が正です。
| やりたいこと | Windows(GeForce) | Mac |
|---|---|---|
| コーディングAI・エージェント | メモリ32GBのノート 20〜28万円 | MacBook Air M4 24GB 20〜24万円 |
| SDXLの画像生成 | RTX 5070機 20〜28万円 | 実用的な選択肢は乏しい |
| 動画生成 | RTX 5090機 55〜75万円 | CUDA前提のツールが多く不向き |
| 30BクラスのローカルLLM | VRAM 24GB以上 40〜60万円 | Mac mini M4 Pro 48GB 30〜36万円 |
| 70B〜120BのMoE型 | VRAM不足のため複数GPUか大容量メモリ機 | Mac Studio M4 Max 128GB 60〜75万円 |
価格差がはっきり出るのは上下の両端です。画像・動画はWindows、大きな言語モデルはMac。真ん中のコーディング用途は、どちらでも同じくらいの金額で揃います。
よくある誤解
「MacはAIに弱い」用途によります。大きな言語モデルを動かす用途では、大容量のユニファイドメモリを積めるMacのほうが有利です。弱いのは画像生成と動画生成で、これはCUDA前提のツールが多いことに由来します。
「WindowsではローカルLLMが不利」不利ではありません。GeForceのVRAMに載る範囲なら速度で勝ります。不利になるのは、VRAMの容量を超える大きさのモデルを動かしたいときだけです。
「開発するならMacが必須」必須ではありません。WSL2でほぼ同じ環境が作れます。判断を分けるのはOSではなくメモリ容量と、その機材で画像・動画を扱うかどうかです。
よくある質問
MacでStable Diffusionは動きますか
動きますが、同じ価格帯のGeForce機より遅くなります。CUDA前提で最適化されたツールが多く、拡張機能の対応もWindows側が先行するためです。画像生成を主目的にするなら、GeForceを選ぶほうが手間も時間も減ります。
ユニファイドメモリとVRAM、同じ容量なら同じですか
同じではありません。ユニファイドメモリはOSとアプリと共有するため、全部をモデルに使えません。当サイトは36GB以下で約2/3、それ以上で約3/4をモデルに使える量として計算しています。一方で速度はメモリ帯域幅で決まり、Mac側はグレードによって120〜800GB/sと大きく開きます。
Windowsで大きなローカルLLMを動かす方法はありますか
あります。GPUを積まず、システムメモリを大きく積む構成です。アクティブパラメータの小さいMoE型なら実用的な速さが出ます。Ryzen AI Max+ 395の128GB機のように、x86でGPUに大きくメモリを割り当てられる製品も出ています。詳しくはGPUなしでローカルLLMは動くのかを参照。
開発用途ではどちらが有利ですか
大きな差はありません。macOSはUNIX系なのでツールの導入が素直で、WindowsもWSL2でほぼ同じ環境が作れます。判断はメモリ容量と、その機種で画像・動画を扱うかどうかで決まります。